黒龍ブランドストーリー

愛情をもって麹と話し合う。まずはそこから、はじまる。

麹造りは酒造りにおいて最も重要とされる工程だ。この工程は、蒸した酒米を適温に放冷することから始まる。

放冷を済ませた蒸米は麹室のなかに入れられ、蒸米をもみほぐす「さらし」という作業が加えられる(吟醸造りの多い当蔵では特にこの作業が多い)。この工程では、酒米一粒一粒が外硬内軟(がいこうないなん:外側が硬く内側が軟らかい、良質蒸米の条件)となるように40℃を超える麹室の中で蔵人が念入りに手を加える。時には4〜5時間に及ぶ、気の遠くなるような重労働である。

さらしを終えた蒸米の手触りは、捌け(さばけ)が良く、弾力がある。その蒸米におなじみのシーンでもある種切り作業、麹菌の胞子を降りかける仕事となる。やり方は、手元の容器に種麹(もやしと呼ばれる麹菌の胞子の塊)を入れ、容器の口に目の細かい特殊な布を当てる。布を通った胞子を頭上より振り掛け、蒸米に舞い降りるまでの約30秒。空気の対流を防ぐため、室内への出入りはもちろん、蔵人は一言も発せず、固唾を呑んで杜氏の掛け声を座って待つ。種きりというこの作業は、目に見えない薄布をかけるように、薄く、均一に、米粒ひとつに胞子ひとつと言われるくらいデリケートな仕事なのだ。

種が付けられた麹は、毛布に包まれ大切に保湿され、一昼夜を経て芽を出し始める。ここからいよいよ代師(だいし)と呼ばれる麹造りの責任者と、麹との綿密な対話が始まる。麹菌は生育が始まると熱を発するため、放置しておくと繁殖状態や温度が不均一になってしまう。生育を、適切な状態に保つために代師は麹室に足繁く通い、麹菌の世話を行うのだ。麹菌が寒がっている時は毛布を掛け、熱がっている時には風通しを良くしてやる。作業は当然深夜に及び、代師は2〜3時間おきに目を覚まし、眠気を振り払いながらの仕事となる。

麹室へと通う代師の様子は、生後間もない乳児を世話する母親にも例えられるほどだ。杜氏、代師、蔵人、蔵に生きる数々の人々の愛情を一身に浴びながら、まずは麹が3日間かけて出来上がる。

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