黒龍ブランドストーリー

自然を見極め、同化すること。それが「造り手」。

日本酒の愛飲家なら、一度は耳にしたことがあるだろう「「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」という言葉。

これは、酒造工程の大切さを順に表した格言である。酒造りにおいて最も重要なのが「麹造り」、次に「酒母造り(酛:もと)」、そして醪(もろみ)を仕込む「造り」といわれる。

ところが、ある専門家によれば一麹であるはずの麹造りにも増して重要なのは「原料処理」であるというのだ。

原料処理とは洗った米を水に浸す浸漬を経て、米を蒸しあげるまでの工程を指す。洗米、蒸米も大切な作業であるのは間違いのないことだが、吟醸造りにおいては特に浸漬の技術が重要度を増す。

それは、なぜか。

自然の産物である米は、その土地の気候、土壌、生産者等、とりまく環境の影響を受けることで、毎年まったく均一の品質を望むことは不可能に近い。さらに、酒質(吟醸、大吟醸等)に合わせて原料米は精米の歩合が異なってくる。さらにこの原料米は、精米時間の違いから生じる含有水分率の差異により、米が水を吸う速度が違ってくる。

このように複雑な原料米から、目的とする酒質を得ようとするには極めて精度の高い厳密な限定吸水が必要となる。
限定吸水とは酒米に適度な水分を吸わせるために、浸漬時間を調節、制限することである。時間が短いと充分に蒸されない蒸米ができ、時間が長いと醪の発酵中に米が溶け過ぎて雑味の多い酒になってしまう。

杜氏はその年の米質をつぶさに分析し、蓄積した経験とデータを駆使して、秒単位で浸漬時間を決断するのである。

酒を「旨い」と感じたとき、「造り手の能力」のことを少しでも思い浮かべていただけたなら、私たちにとってはこの上ない喜びになるのである。

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